2010年06月11日
謡曲-鉄輪-
夕顔町を少し下がるとそこには、また謡曲ゆかりの地があります。
堺町通松原下るの、「鉄輪井」です。
かつては、火鉢や囲炉裏に置いて、鍋をかける三本足の五徳を、鉄輪と呼んでいました。
下京に住む一人の女が、自分を捨て、新しく妻を迎えた不実を恨んで、貴船神社に日参し、丑の刻詣りをしていると「頭に鉄輪をいただき、その三本の足に火をともし、顔に丹を塗り、赤い着物をきて、怒る心をもてば、たちまち鬼となって願いがかなう」との神託をうけます。
一方、夫の方は悪い夢見が続くので、安部晴明に占ってもらうと、女の恨みで今夜にも命が尽きるといわれ、急ぎ祈祷をうけます。すると、鬼となった女が現れ、夫を責め、後妻の髪をつかんで打ち据えますが、守護する神々に追い立てられ、神通力を失い、退散します。
この鉄輪の女が、調伏され、ついにこの鉄輪井のあたりで、息絶えたという言い伝えです。そこで、鉄輪とともに霊を弔い「鉄輪塚」を築いたということです。昭和10年、鉄輪井の横に祀られている町内の氏神、命婦稲荷社を再建するときに、鉄輪井も「霊泉」として、板の井戸枠を板石にと改められ、発掘された「鉄輪塚」の石碑を、鉄輪大明神の御神体として小祠をつくって納めたそうです。
かつては、縁切り井戸として、この井戸水を飲ますと相手との縁が切れるといわれていましたが、地下鉄工事などの影響で、現在は涸れてしまっています。それでも、ペットボトルに水を入れてきて、鉄輪井に供えて祈り、持ち帰る人もいるそうな・・・。
- by zuzu
- at 09:06
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